先日、この秋にオープン予定の小ホールへ伺わせていただいた。
まだ、一度もお客様を迎え入れていないホールの独特の匂いと、全てが新しい設備の数々をホールの方に説明を受けながら楽しんだ。
そして、私が行った目的を果たすべく表周りを案内され、このホールでの公演の時にどのくらいのスタッフが必要なのか、というアドヴァイスを求められた。
一見、シンプルでとても問題がありそうに思えないホールなのだが、建物の構造上の難問があることがそこで発覚。
客席横扉から、建物の他の施設から簡単に誰でも入れてしまう構造になっていたのだ。
つまり、一般に開放しているスペースから客席に入れてしまうのだ。
これでは、こっそりどころか、堂々と、ただで公演が見れてしまう。
だからといって、そこに壁を作って仕切る事も今となっては不可能なのだ。
さらに、客席扉は非常用扉のため施錠はできない。
ちょっと考えればこのような致命的な構造にはならなかったはずである。
全国の公共施設担当者。またはそこを管理する市区町村の方々に、声を大にして言いたい!!!!
建てる前に、ぜひ相談して下さい。
税金を使用した公共の施設なのですから、失敗は許されないはずです。
機材等の消耗品はいつかは壊れるのでその都度再検討をすれば良いかもしれませんが、建築物は一度建ててしまってからでは遅いのです。
なぜ、相談しないのか・・・。相談する相手を間違えているのではないか?
著名な音楽家に表周りの事を聞いても分かるはずがありません。コンサートの時は表にはいないのですから・・・。
私は、今までにそのようなホールをたくさん見てきました。
完璧だったホールが今まであっただろうか・・・?
ホールを建てる時は、どこも皆音響にこだわり、専門家に音響設計を依頼します。
そしてロビー周りには美術品等のアートを配します。
でも本当はそれでけではだめなのです。
ホールは建てて終わりなのではなく、ホールを使う時のことも考えて設計しなくてはならないのです。
舞台の裏側も同じです。どんな公演で使うのか様々なことを予想して作らないと、とんでもなく不便なホールになってしまいます。
特に小さなホールは使い勝手が良い程人気は高くなります。
そして大ホールはホールにホールサービスがついている場合、ホール代金にそのサービスのスタッフ分の人件費が含まれています。その人件費はホールの設計に左右されていると言っても過言ではありません。
私がスタッフへいつも言っていることに「お客様の導線を考える」というのがあります。
「導線を考える」とは、お客様がどのように動くかを想像するということ。
これができれば、一番効率良く、お客様に動いていただくことができ、余計なサービスがいらなくなる。そして、何が必要かも見えてくる・・・。
設計の際に、それができていれば問題が起こらないはずなのです。
どうかお願いします。
これからホールを建てようと思っている方々。
設計の段階で、相談して下さい。
長年ホールに携わり、あらゆるホールで仕事をして来た者でないと気づかないことが沢山あります。
そして、皆から愛される良いホールを作って下さい。